就労継続支援B型では、利用者が生産活動を行った際にその対価として工賃が支払われます。この工賃は事業所の基本報酬にも関連しています。この記事では、B型事業所を開業する際に押さえておきたい工賃の仕組みやルール、計算方法、工賃規程について詳しく説明します。
就労継続支援B型事業所の工賃
就労継続支援B型事業所における工賃とは、利用者が仕事や生産活動を行った際に支払われる対価のことです。B型事業所では雇用契約に基づく就労が難しいため、利用者は雇用契約を結ばずに仕事を行います。このため最低賃金が適用されず、支払われる対価は「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれます。工賃は生産活動の利益(売上 – 経費)から支払われ、給付費から支払うことは原則としてできません。利用者1人当たりの平均工賃は月額3,000円を下回ってはなりません。
工賃と基本報酬
就労継続支援B型事業の基本報酬には以下の2つの体系があり、事業所ごとに選択します。
・平均工賃月額に応じた報酬体系(工賃連動型)
従業員(職業指導員や生活支援員)の配置総数が、常勤換算で従業員1人あたり7.5人以上の場合は、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)が適用されます。それ以外の場合は、就労継続支援B型サービス費(Ⅱ)が算定されます。
【就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)】
(1) 定員20人以下の場合
1万円未満>566単位/日
1万円以上1万5,000円未満>590単位
1万5,000円以上2万円未満>611単位
2万円以上2万5,000円未満>631単位
2万5,000円以上3万円未満>643単位
3万円以上3万5,000円未満>657単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>672単位
4万5,000円以上>702単位
(2) 定員21人以上40人以下の場合
1万円未満>504単位/日
1万円以上1万5,000円未満>525単位
1万5,000円以上2万円未満>541単位
2万円以上2万5,000円未満>551単位
2万5,000円以上3万円未満>572単位
3万円以上3万5,000円未満>584単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>598単位
4万5,000円以上>625単位
(3) 定員41人以上60人以下の場合
1万円未満>473単位/日
1万円以上1万5,000円未満>493単位
1万5,000円以上2万円未満>508単位
2万円以上2万5,000円未満>518単位
2万5,000円以上3万円未満>537単位
3万円以上3万5,000円未満>549単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>562単位
4万5,000円以上>586単位
(4) 定員61人以上80人以下の場合
1万円未満>464単位/日
1万円以上1万5,000円未満>484単位
1万5,000円以上2万円未満>498単位
2万円以上2万5,000円未満>508単位
2万5,000円以上3万円未満>527単位
3万円以上3万5,000円未満>539単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>552単位
4万5,000円以上>576単位
(5) 定員81人以上の場合
1万円未満>448単位/日
1万円以上1万5,000円未満>468単位
1万5,000円以上2万円未満>482単位
2万円以上2万5,000円未満>491単位
2万5,000円以上3万円未満>510単位
3万円以上3万5,000円未満>521単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>533単位
4万5,000円以上>557単位
【就労継続支援B型サービス費(Ⅱ)】
(1)定員20人以下
1万円未満>516単位/日
1万円以上1万5,000円未満>538単位
1万5,000円以上2万円未満>554単位
2万円以上2万5,000円未満>565単位
2万5,000円以上3万円未満>586単位
3万円以上3万5,000円未満>599単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>613単位
4万5,000円以上>640単位
(2)定員21人以上40人以下
1万円未満>461単位/日
1万円以上1万5,000円未満>480単位
1万5,000円以上2万円未満>494単位
2万円以上2万5,000円未満>504単位
2万5,000円以上3万円未満>523単位
3万円以上3万5,000円未満>534単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>547単位
4万5,000円以上>571単位
(3)定員41人以上60人以下
1万円未満>427単位/日
1万円以上1万5,000円未満>445単位
1万5,000円以上2万円未満>458単位
2万円以上2万5,000円未満>467単位
2万5,000円以上3万円未満>485単位
3万円以上3万5,000円未満>495単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>507単位
4万5,000円以上>529単位
(4)定員61人以上80人以下
1万円未満>418単位/日
1万円以上1万5,000円未満>436単位
1万5,000円以上2万円未満>449単位
2万円以上2万5,000円未満>458単位
2万5,000円以上3万円未満>475単位
3万円以上3万5,000円未満>485単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>497単位
4万5,000円以上>519単位
(5)定員81人以上
1万円未満>404単位/日
1万円以上1万5,000円未満>421単位
1万5,000円以上2万円未満>434単位
2万円以上2万5,000円未満>442単位
2万5,000円以上3万円未満>459単位
3万円以上3万5,000円未満>468単位
3万5,000円以上4万5,000円未満>480単位
4万5,000円以上>501単位
・「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価
従業員(職業指導員および生活支援員)の配置総数が常勤換算で7.5:1以上であれば、就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)が算定されます。それ以外の場合は就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)が適用されます。
【就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)】
定員20人以下>556単位
定員21人以上40人以下>494単位
定員41人以上60人以下>463単位
定員61人以上80人以下>454単位
定員81人以上>438単位
【就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)】
定員20人以下>506単位
定員21人以上40人以下>451単位
定員41人以上60人以下>417単位
定員61人以上80人以下>408単位
定員81人以上>394単位
また、就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)または(Ⅳ)が算定されている場合、特定の要件を満たすと地域協働加算やピアサポート加算が適用されることがあります。
【地域協働加算】
利用者と地域住民が協力して生産活動に関わる支援を行い、その活動内容を公表すると、30単位/日の加算があります。対象地域は所属市町村や近隣自治体で、地域の結びつきや活性化、地域の課題解決に関わる取り組みが求められます。ただし、生産活動の一環である必要があり、それ以外の場合は加算の対象外です。
適切な取り組みの例は、地域イベントへの出店や施設外の活動、清掃活動など地域貢献や交流を含むものです。一方、生産活動と関連しない場合や娯楽目的の活動、見学や体験だけを目的としたものは対象外です。
公表方法はインターネットや地域の情報誌への掲載、事業所での掲示などが該当し、報酬請求日までに公表する必要があります。
【ピアサポート加算】
一定の支援体制下で、障害者や元障害者によるピアサポート(経験に基づく相談援助)を行うと、受けた利用者数に応じて100単位/月が加算されます。加算するための条件は、2人以上の従業者が障害者ピアサポート研修を受け、年に1回以上、従業者に障害者への配慮について研修を行うことです。
工賃はB型事業の重要ポイント
工賃はB型事業の重要な要素であり、平均工賃月額に応じて基本報酬が高くなる報酬体系を選択できます。高い工賃は利用者にとってやりがいや成長を感じられる職場と経済的・精神的な支えとなります。
工賃の計算方法や支払いに関する規程は事業所ごとに異なります。利用者が生産活動で収益を生み出し、それに応じて工賃が支払われる仕組みが整えられます。
工賃向上のためには生産活動の売上を増やすかコストを減らすことが必要です。請負の増加や効率化など様々な方法が考えられます。工賃向上計画の策定や実行も重要で、これは利用者の自立した生活を支援するための計画です。
工賃は利用者の活動の対価であり、その向上はQOLの向上につながります。また、事業所の報酬額にも影響するため、重要な課題となります。工賃の額だけでなく、生産活動の内容や支払い方など、様々な側面から考えることが重要です。