「うつ病の人が利用できる支援にはどのようなものがあるのか?」「うつ病の人が就労支援を受けられる支援機関は?」
このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。うつ病の方に向けて職業紹介や就労相談、職業訓練、就活サポート、就労定着支援など多くの就労支援があり、それぞれの方に状況に合ったサポートを受けられます。
この記事では、うつ病の方が受けられる就労支援や支援機関などをご紹介します。うつ病の方に向いている仕事なども紹介しているので、是非今後の参考にしてみてください。
うつ病の人が受けられる就労支援
うつ病の方が受けられる就労支援としては以下のようなものがあります。
職業紹介就労相談職業訓練就活サポート就労定着支援職場復帰支援(リワーク支援)職場適応援助者(ジョブコーチ) |
仕事に就くための準備から職業の紹介、仕事に就いてからのサポートまで多岐に渡ります。自分のペースで、状況に合った就労支援を受けることが大切です。
職業紹介
個々の希望や状況に合った仕事を紹介してくれます。ただ職業を紹介してくれるだけではなく、紹介してくれた職業のメリットやデメリット、給与、待遇などさまざまなアドバイスをしてくれます。支援員の話を聞きながら、自分に合った就職活動を進めていくことが可能です。
就労相談
就労相談は、仕事に関する悩みや疑問に対して、個々の状況に適したアドバイスをしてくれる就労支援です。仕事中に症状があらわれたときの対処法や、向いている職種などさまざまなことを相談できます。また、自分に合った職業がわからない方は、希望すれば適性検査を実施してくれるケースもあります。
職業訓練
職業訓練は、仕事をするうえで必要となる技術や知識を身につけるために、サポートしてくれる就労支援です。具体的には、ビジネスマナーや簿記、パソコンでの文章作成など多岐にわたります。必要な技術や知識を身につけるには時間も必要なケースも多いため、継続的に講習を受ける方が多いです。職業訓練で、技術や知識を身につければ、希望の職業に就ける可能性が高くなるでしょう。
就活サポート
就職活動を支援してくれる就活サポートも就労支援のひとつです。履歴書の書き方や面接対策、職業体験先の紹介、職場探しのサポートなどをしてくれます。うつ病の程度や症状、希望職種や待遇、性格などを考えて就活サポートをしてくれるので、就職活動の際は受けることをおすすめします。就活サポートを受けることで、就職活動をスムーズに進められるようになるでしょう。
就労定着支援
働き先の環境や業務内容に順応して、長期間働き続けられるようにサポートするサービスです。会社内でのコミュニケーションの取り方や体調管理など、仕事上のどんな悩みでも相談できます。障害者職業総合センターの調査によると、就労定着支援を受けた方は、受けなかった方に比べ仕事の定着率が高いという報告があります。悩みが解決するまでに至らなくても、他の人に自分の悩みを話すことで精神的に楽になり、仕事の定着につながることもあるので、少しでも悩みがある方は利用してみてください。
職場適応援助者(ジョブコーチ)
職場適応に課題がある方に対して、職場適応援助者が、職場を訪問し支援を行うサービスです。
うつ病の方に対しては、他の従業員との関わり方、効率の良い業務の進め方などのサポートをします。また、職場の上司や同僚に、うつ病に関する理解や関わり方、適切な指導法などについてアドバイスも行います。
ジョブコーチには、配置型と訪問型、企業在籍型の3種類があります。
配置型:地域障害職業センターに配置されているジョブコーチ。自ら支援を行う以外に、訪問型や企業在籍型のジョブコーチと連携し支援を行うこともあります。訪問型:就労支援を行う社会福祉法人などに雇用されているジョブコーチ。訪問型職場適応援助者の養成研修を修了した人が担当しています。企業在籍型:障害者を雇用する企業に雇用されているジョブコーチ。企業在籍型職場適応援助者養成研修を修了した人が担当しています。 |
うつ病の方が業務を遂行して職場に順応するために、具体的な目標を立て、支援計画に基づいて実施されます。
職場復帰支援(リワーク支援)
うつ病により休職している方の職場復帰を円滑に進めるためのサポートです。厚生労働省の「心の健康問題によって休業した労働者の職場復帰支援の手引き」によると、以下の5つのステップを踏むことになっています。
病気休業開始及び休業中のケア主治医による職場復帰可能の判断職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成最終的な職場復帰の決定職場復帰後のフォローアップ |
引用:心の健康問題によって休業した労働者の職場復帰支援の手引き
職場復帰支援は、休業した人、企業の担当者、主治医が協力して無理のないスケジュールで進めていくことが重要です。
うつ病の人の就労支援を行っている支援機関
ここではうつ病の人が就労支援を受けられる支援機関をご紹介します。支援機関は、自治体によって名称や利用条件が異なることがあるため、市町村役場にお問合せください。
就労移行支援事業所ハローワーク障害者就業・生活支援センター地域障害者職業センター就労継続支援A型事業所就労継続支援B型事業所 |
ひとつの支援機関しか利用できないわけではないので、複数の機関に相談や見学に行くことをおすすめします。効果的に就労支援を受けるために、自分に合った支援機関を探して利用してください。
就労移行支援事業所
就労移行支援事務所は、一般企業への就職を目指す方が、必要となるスキルや知識を身につけるための支援を行う機関です。必要となるスキルや知識は、コミュニケーションの取り方や履歴書の書き方、面接指導、職場見学や実習、ビジネスマナー、パソコン技術の向上など多岐に渡ります。また、就職後に安定して働き続けられるための定着サポートも支援内容に含まれています。さまざまな就労支援を受けられるため、一般企業へ就職したい方におすすめの機関です。一般的に障害者福祉サービス受給証や医師の診断書(意見書)があれば、障害者手帳を取得していなくても利用できます。
ハローワーク
ハローワークは、職業相談、職業紹介、雇用保険の手続きなどの支援を行っている機関です。うつ病の方が求職登録を行うと、向いている求人情報を紹介してくれたり、事業主に向いている求人がないか問い合わせてくれたりします。また、希望すれば面接に同行してもらうことも可能です。
「うつ病の方の就職活動の進め方」「うつ病であることを会社伝えるべきか」「うつ病であることを履歴書にどう記載するべきか」などきめ細かいサポートを受けることができます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害がある方の就労と生活の両面を支援する機関です。就労相談や就活サポート、就労定着支援、状況に適したサービスが受けられる機関の紹介や同行などの就労支援が受けられます。生活面での支援内容は、健康管理や金銭管理のサポート、障害者手帳取得手続きや障害者年金の申請についての相談など多岐に渡ります。
令和6年4月時点で全国337カ所に設置されており、障害者手帳を取得していなくても利用できます。就労だけでなく生活面のサポートも受けることを希望する方に、おすすめの機関です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、うつ病を含む障害者が職業評価、職業指導、職業訓練、職場適応援助、リワーク支援などの専門的な職業リハビリテーションが受けられる機関です。また、障害者を雇用している事業主に対して、雇用管理に関して専門的なアドバイスも行っています。
各都道府県に1ヶ所(北海道・東京・愛知・大阪・福岡は2ヶ所)設置されており、障害者手帳がなくても利用可能です。
就労継続支援A型事業所
就労継続支援A型は、障害のため一般企業で働くことが難しい方を対象に、雇用契約を結び働く場所を提供するサービスです。また、働くために必要な知識や技術を身につける訓練も受けられます。就労支援も受けたいがすぐにでも働いてお金を稼ぎたいという方におすすめです。
就労継続支援A型は事業所により仕事内容が異なり、採点賃金は保証されていますが、定員オーバーや面接で不採用になるケースがあります。
就労継続支援A型事務所は全国各地にあり、障害者手帳もしくは医師の診断書(意見書)、障害者福祉サービス受給者証を取得していれば利用可能です。
就労継続支援B型事業所
就労継続支援B型は、働く場所の提供、働くために必要な知識や技術を身につける訓練が受けられるという点で就労継続支援A型とサービスです。しかし、雇用契約の有無と賃金、対象者については以下のような違いがあります。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象者 | 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者 | 就労経験があるものであって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者1及び2に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者 |
雇用契約 | あり | なし |
賃金 | 最低賃金保証 | 工賃が支払われる(一般的に最低賃金より安い)。 |
引用:厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」
就労継続支援B型は、体力・精神的に長時間働くことが難しく、自分のペースで働きたい方におすすめです。
利用するために面接はありませんが、定員がオーバーしている場合や他の人に危害を加える危険性が疑われる場合などは、利用を断られることがあります。
就労継続支援B型は、事業所により仕事内容が異なるため、自分に合った仕事を探すことが大切です。
就労継続支援B型事務所は全国各地にあり、障害者手帳もしくは医師の診断書(意見書)、障害者福祉サービス受給者証を取得していれば利用できます。
うつ病の人に就労支援を受けることをおすすめする理由
就労支援は、就職活動や職場への順応の助けとなる重要なサービスです。うつ病の人に就労支援を受けることをおすすめする理由は以下の通りです。
精神的な安定うつ病の人に合った就職活動職場環境の調整 |
精神的な安定
健康な方でも就職活動は、焦りや不安などで大きなストレスがかかります。うつ病の方は、「病気のせいで落とされたりしないか」「うつ病のことを伝えるべきか」
など、健康な方にはない悩みが多く、一層ストレスを感じやすい状態です。
就労支援を利用すれば、あなたの悩みに対して専門スタッフが適切なアドバイスをしてくれるため、ストレスが軽減し精神的な安定につながるでしょう。
うつ病の人に合った就職活動
うつ病の方は、症状を考慮しながら就職活動を進める必要があります。しかし、どのように就職活動をしていけばよいのかわからない方が多いはずです。
就労支援を利用して専門家のアドバイスを受けながら就職活動すれば、うつ病が悪化する可能性を抑えられるだけではなく、現在の状況に合った求人紹介を提供してもらえるため、効率的に進められます。
職場環境の調整
うつ病の人は健康な人より離職率が高い傾向があるため、仕事を見つけることも大切ですが、うつ病を悪化させずに長期間継続して働き続けることも大切です。
職場に順応して長期間働くためには、体調管理などに気をつけなければいけません。また、うつ病の人が働きやすい職場環境に整えることも重要です。
就労支援の中には、担当者が職場を訪問して、就労時間の調整や向いている業務、うつ病の人への接し方などをアドバイスし、職場環境を整えてくれる支援もあります。これまでうつ病のため離職を経験したことがある方には、就労支援を受けることを特におすすめします。
うつ病の方に向いている仕事
うつ病は、ストレスがかかると悪化しやすい病気です。再発しやすい病気のため、治ってもストレスがかかる仕事をしていると再発する危険性が高くなってしまいます。
そのため、うつ病の方にはストレスがあまりかからない仕事をおすすめします。
うつ病の方に向いている仕事の特徴は以下の通りです。
在宅でできる仕事他の人とあまりかかわらなくてもよい仕事精神的な負担が少ない仕事就労時間に融通がきく仕事 |
すべての特徴を満たす仕事を見つけるのは難しいかもしれないので、優先順位をつけてできるだけストレスがかからない仕事をするようにしましょう。
以下がうつ病の方におすすめの仕事の一例です。
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まとめ
うつ病の方が受けられる就労支援について紹介しました。就労支援は、仕事を見つけるためだけではなく、うつ病の悪化や再発を抑え、職場に順応して長期間働き続けるためのサポートが受けられるサービスです。
就労支援を利用するときは、かかりつけ医に相談しましょう。長年、診察してきたかかりつけ医なら、就労支援を受ける状態かを判断してくれるはずです。また、就労支援を受けている途中に体調が悪化した場合は、無理をせず一時中断して、かかりつけ医に相談してましょう。
自分に合った就労支援を利用して、希望の仕事を探し充実した人生を送れることを願っています。