後天的な精神疾患である統合失調症は、少なくない割合の方が発症する可能性のある病気です。かつて統合失調症は完治や社会復帰が難しいと言われていましたが、治療方法の確立や医療の向上などにより、治る病気となりました。統合失調症の方も、適切な支援を受けることで就業や社会復帰も十分可能です。今回の記事では、統合失調症の方が利用できる経済的支援や就労支援について解説します。統合失調症の方に向いている仕事についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
統合失調症とは
統合失調症とは、脳内のネットワーク不調が原因でこころや考えなどがまとまりを欠いた状態になる病気です。かつては精神分裂病とも呼ばれていました。統合失調症となると、行動や気分、人間関係などに多くの影響が出てしまいます。
統合失調症の特徴
統合失調症は、「陽性症状」と「陰性症状」が現れる特徴があります。
陽性症状
陽性症状とは、健康なときにはなかった状態が現れることです。おもな陽性症状には以下のものがあります。
・幻覚…実際にはないものを知覚する症状
・幻聴…ほかの人には聞こえない声が聞こえる症状
・関係妄想…なんでも自分に関係あると思い込む症状
・被害妄想…周囲が自分を陥れようとしていると思い込む症状
・注視妄想…つねに自分が見張られていると思い込む症状
・考えの混乱…考えをまとめられなくなり、話が途切れたり、脱線したりする症状
陰性症状
陰性症状とは、健康なときにあったものが失われてしまう症状です。おもな陰性症状には、以下のものがあります。
・意欲がなくなる
・無気力になる
・自分の身の回りのことにかまわなくなる
・感情が表に出にくくなる、または無表情で喜怒哀楽がなくなる
・友人や家族など人と関わることを避ける
・引きこもりがちになる
統合失調症の割合
統合失調症は100人に1人ほどの割合でかかる病気と言われており、それほど珍しい病気ではありません。発症年齢は20代、10代、30代、40代の順に多く、特に若年層で発症するケースが多いです。卒業や就職、結婚、妊娠や出産、育児といったライフイベントをきっかけに発症することも少なくありません。
統合失調症の治療
統合失調症はかつて治らない病気とされていましたが、現在は回復可能となりました。治療に長期間を要する場合が多いものの、患者さんの過半数は回復し、重度の障害が残ってしまう場合は全体の20%程度と言われています。早めに治療するほど症状が重くなりにくくなると言われているため、早期発見と早期治療が重要です。
統合失調症は、抗精神病薬を中心に、睡眠薬、抗不安薬などによる薬物治療が基本で行われます。ほかにも、病院や施設のデイケアにおける運動療法、作業療法、社会生活技能訓練(SST)などのリハビリテーションも治療にもちいられています。
統合失調症のある方が利用できる経済的支援
統合失調症の方は、治療のために通院や薬の処方を受ける必要があり、費用が負担になることがあります。各種経済的支援を利用することで、治療で発生する費用の負担を軽減することも可能です。統合失調症の方が利用できる各種経済的支援を紹介します。
自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)
自立支援医療とは、統合失調症を含む何らかの精神疾患により、通院による治療を続ける必要のある方を対象とした支援制度です。公的医療保険で3割負担すべき医療費が、1割負担に軽減されます。さらに1割の負担が過大なものとならないよう、1カ月あたりに世帯所得に応じた上限額も設けられています。統合失調症を含めて、医療費が高額となる治療を長期にわたって継続する必要がある方は、1カ月あたりの負担限度額が低くなるのも特徴です。
申請は市町村の担当窓口で行えます。なお自立支援医療の適用が認められて発行される受給者証の有効期限は、原則として1年です。受給者証の有効期限が切れたあとも支援を継続する場合には、更新手続きが求められます。
高額療養費制度
入院や外来通院などで発生した医療費が高額になった場合、所得に応じた自己負担限度額を上回った金額が、加入している医療保険(国民健康保険、社会保険など)から後日支払われる制度です。申請方法や申請に必要な書類は、加入している医療保険により異なります。
記載してある医療保険に確認しましょう。
都道府県の心身障害者医療費助成制度
心身に重度の障害がある方に医療費の助成をする制度で、対象は各都道府県で異なります。
医療費控除
生計を一にする家族の医療費が、1~12月の1年間で10万円を超える場合、所得税の控除が受けられる制度です。
精神障害者保健福祉手帳
長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある精神障害者を対象に、自立と社会参加の促進を目的に発行される手帳です。手帳を持っていると公共料金の割引や税金の控除・減免などが受けられます。
生活保護
統合失調症などの疾患や障害、ケガなどにより働けなくなり経済的に困窮する場合、最低限度の生活を保障し、自立を手助けするための制度です。家族全員の所得や資産を合算したものが、国が定める生活保護の基準を下回っている場合、生活費の保証を受けられます。
障害年金
病気やケガなどが原因で一定程度の障害が継続する場合に、生活を保障するための制度です。初めて医療機関を受診した際に加入していた年金によって受給できる障害年金が異なります。
特別障害者手当
精神または身体に重度の障害があり日常生活において常時特別な介護を必要とする方を対象に、負担軽減と福祉の向上を目的とした手当が支給されます。
統合失調症のある方が利用できる就労支援
統合失調症の方が就業や社会復帰を目的に利用できる就労支援制度には、「就労移行支援」と「就労継続支援」があります。それぞれの支援制度について解説します。
就労移行支援
就労移行支援とは、一般企業への就職や復帰を目指す方を対象に、就職に必要な知識やスキルの取得・向上を目的としたサポートを行う支援制度です。就職活動へのサポートはもちろん、統合失調症の方が就職後に継続して仕事ができるようにフォローも行います。
就労移行支援は、一般企業での雇用を目指す支援機関である就労移行支援事業所で提供されます。統合失調症の方それぞれに個別支援計画が作成され、就労移行支援事業所へ定期的に通いながら以下の支援が受けられます。
・生活リズムを整える
・ビジネススキルやマナーを学ぶ
・コミュニケーションスキルの習得
・就職を目的としたトレーニング
・自分に合う就職先探し
・就職後仕事を安定して続けるためのサポート
就労移行支援を受けられるのは原則2年間です。また65歳未満の年齢制限があります。
就労継続支援
就労継続支援とは、病気や障害が残ってしまい一般企業への就職が困難な方を対象とした支援です。働く機会を提供するサービスで、雇用契約を結ぶ「就労継続支援A型(雇用型)」と雇用契約を結ばない「就労継続支援B型(非雇用型)」に分けられます。
就労継続支援は働く場所を提供することが目的のため、賃金が支払われます。また、利用期間や年齢に制限はありません。
統合失調症の方に向いている仕事
統合失調症の症状の現れ方や頻度、状態は、患者さんによって異なります。自分の症状や特性を理解した上で仕事を探すことが重要です。統合失調症の傾向から、ストレスの負担がかかりにくく、通院しながら働きやすい仕事が合っていると言えるでしょう。
統合失調症の方に向いている仕事の一例は、以下の通りです。
・事務職
・軽作業
・商品管理
いずれもルーティーンワーク、自分のペースで働きやすい、不特定多数の人と関わる機会が少ない、といった特徴があります。
まとめ
統合失調症の概要や特徴とともに、統合失調症の方が利用できる経済的支援や就労支援、統合失調症の方に向いている仕事について解説しました。統合失調症は早期の受診や服薬によって回復が見込める病気です。病状によっては一度離職が必要となることもあるかもしれませんが、経済的支援や就労支援を活用することで社会復帰も目指せます。
大阪府枚方市のJR学研都市線「長尾駅」前にある障がい福祉サービス事業所「あゆみ」では、利用者さん一人ひとりに合わせた支援やトレーニングを提供しています。統合失調症の方への就労支援も行っています。ぜひお気軽にご相談ください。