発達障害の方は障害の特性により、職場の人間関係でトラブルを起こしてしまうことがあります。「発達障害で働くのは難しい？」「人間関係でトラブルを起こさないようにするにはどうしたらいい？」と悩む方も多いかもしれません。今回の記事では、発達障害の方が職場の人間関係トラブルで悩んでしまう具体的な原因と解決方法を解説します。職場の人間関係にお悩みの際には、ぜひ参考にしてください。
発達障害のある人が職場の人間関係を難しいと感じる原因や理由
発達障害のある人にとって、職場で円滑な人間関係を築くのは難しいと感じていませんか。発達障害の特性から、職場の人間関係で悩んだりトラブルになったりで困ってしまうことも少なくありません。発達障害の人が、職場の人間関係で悩む具体的な原因について解説します。
特性から生じる「コミュニケーションのすれ違い」
自閉症やアスペルガー症候群を含む広汎性発達障害（自閉症スペクトラム・ASD）には、人とのコミュニケーションを取るのが苦手、または適切なコミュニケーションが取れない、といった特性があります。
コミュニケーションのすれ違いによって相手に不快感を与えたり、正しく指示が伝わっていなかったりといったことでトラブルになることもあるでしょう。
周囲との「ズレ」
注意欠如・多動症（ADHD）の特性
大切なことを忘れてしまったり、気が散りやすいためミスが多かったりといったことがあります。
業務やスケジュールの管理ができない、指示や納期を忘れてしまった、などの周囲とのズレが発生することで、人間関係のトラブルに発展することもあるでしょう。
人間関係のトラブル対象は、社内の人間はもちろん、取引先やお客様といった社外の人間も含まれます。社内での人間関係トラブルが起きると孤立したり、社外で人間関係トラブルが起きると契約打ち切りや信頼損失といった、企業側への損害に発展したりするリスクもあります。
発達障害の特性から生じる人間関係のトラブル「あるある」
発達障害の特性が原因で生じる、具体的な人間関係のトラブルを順に解説します。
コミュニケーションのすれ違い
相手とのコミュニケーションのすれ違いにより、以下のようなトラブルが起きてしまいがちです。
- 曖昧な表現や指示が正しく理解できない
- 場の空気を読めず、不適切な態度や発言をしてしまう
- 思ったことをそのまま言ってしまうため、悪気なく相手を傷つけてしまう
- 自分の興味関心のある話題や自分の話ばかりしてしまう
- 怒りや悲しみなどの感情を露わにしてしまう
非言語的コミュニケーションの理解困難
表情やしぐさといった、非言語的コミュニケーションを理解するのが苦手な特性により、以下のような困りごとがあります。
- 表情や声のトーンから相手の感情を読み取れない
- ボディランゲージやジェスチャーの意味がわからない
ルールの徹底と融通の利かなさ
社会常識を理解できなかったり、自分自身のこだわりが強すぎたりといった特性は、以下のようなトラブルや困りごとにつながります。
- スケジュール管理ができない
- 決まり事や社会常識を理解できない（休憩時間を守れない、敬語が使えない）
- 決まったルールやマニュアルに固執し柔軟性がない
- 予定外の出来事や変更に対応できずパニックになる
- 他人の失敗を絶対に許さない
多動や落ち着きのなさ
多動や落ち着きのなさといった特性から、以下のようなトラブルや困りごとになりがちです。
- 指示やスケジュールを忘れる
- 物を紛失する
- 小さなミスが多い
職場の人間関係トラブルを解決するための具体的なアプローチ
発達障害の特性により職場の人間関係トラブルが起きがちな場合、工夫をすることで他社とのコミュニケーションや業務を円滑にできる場合があります。職場の人間関係トラブルを未然に防ぐための、具体的なアプローチを順に解説します。
自己理解と他者理解を深める
発達障害の特性によって職場の人間関係が悪化する場合、周囲の人間に発達障害の特性を理解してもらうことが必要です。自分の得意なことや苦手なこと、ストレスになることを書き出した自分の取扱説明書を作り、周囲へ配布するのも良いでしょう。
自分を理解してもらうだけでなく、できるかぎり相手のことを理解することで円滑なコミュニケーションにもつながります。相手の性格や考え方の傾向を推測し、相手の取扱説明書として相手を理解するように努めましょう。
コミュニケーションの「型」を作る
相手とコミュニケーションを取るのが苦手な場合、以下のようなシーンや状況に応じた「型」を作っておくのがおすすめです。
- 具体的に伝わる報連相
- いつ、誰が、どこで、何を、どのように、どうするか
- わからないことがあればためらわずに質問できるテンプレ
- 〜〜についてよくわかりませんでした。具体的にどうすればいいか教えていただけますか？など
- 感謝や謝罪の言葉のテンプレ
- ありがとうございます、申し訳ありませんなど
コミュニケーションの型やテンプレートを作っておけば、シーンやいざというときにスムーズに自分の要望や気持ち、感謝や謝罪を伝えられるようになります。
適切な距離感を保つ
周囲の人と近すぎず、遠すぎない距離感を保つことも重要です。以下のように、発達障害の特性に合わせて人との距離のとり方を意識してみましょう。
- 休憩時間やランチ、飲み会などがストレスに感じたら、無理に参加しなくてもいい
- 休憩時間、退勤時間など仕事とプライベートの割り切りを意識する
- 挨拶や簡単な返事など、最低限のコミュニケーションは徹底する
業務が円滑に進むように工夫をする
発達障害の特性により業務に支障が出てしまうときには、以下のような工夫をするのがおすすめです。
- スケジュールや業務内容などはホワイトボードに書き出して可視化する
- 変更が出た場合は早めに伝えてもらい、優先順位を明確にしてもらう
- メモを取る
- 同時に複数の作業を行うのは避ける
職場の人間関係トラブルが起きた時の対処法
あらかじめの対策や予防策を行っていても、発達障害の特性により人間関係のトラブルに発展してしまうことがあります。職場の人間関係トラブルが発生してしまったときの対処方法を解説します。
一次的な対処法
自分も相手も感情的になっている場合、より状況が悪化してしまう可能性があります。まずは自分も相手も冷静になるように距離を取りましょう。
- その場を離れる
- クールダウンする
- 感情的にならずに状況を整理する
具体的な解決策
人間関係のトラブルが起きてしまった場合、その場を収めてから具体的な解決に動かなければ業務にも支障が出てしまうかもしれません。自分ひとりで抱え込まず、以下のような方法を検討しましょう。
- 信頼できる上司や先輩に相談する
- 第三者（産業医やカウンセラー）に話を聞いてもらう
- 必要に応じて配置換えや業務内容の変更を相談する
相談先・支援機関リスト：一人で悩まず専門家を頼ろう
発達障害のある人が職場の人間関係で悩んでいるとき、トラブルになりそうなときなどに相談できる先を、リストにまとめました。
職場内の相談先
- 上司
- 先輩
- 人事担当者
- 産業医
職場外の相談先
- 発達障害者支援センター
- 就労移行支援事業所
- 精神保健福祉センター
まとめ：「苦手」な人間関係も、工夫とサポートで乗り越えられる
発達障害がある人が職場の人間関係トラブルになってしまう原因や具体的なトラブルや困りごと、トラブルに発展してしまったときの対策方法を解説しました。発達障害の特性により、コミュニケーションが苦手だったり、業務の進め方に支障が出てしまったりすることがありますが、工夫と必要なサポートを受けることで人間関係トラブルを未然に防ぎながら働くことも可能です。まずは自分の特性をしっかり理解し、得意なことを発揮できる職場を見つけることもおすすめです。
