障害者の方への自立や雇用の支援、援助を目的にした法律のひとつに、「障害者総合支援法」があります。障害者総合支援法は2013年に施行されてから、2025年現在まで何度も見直しや改正が行われてきました。本記事では、障害者総合支援法の概要や主要サービスの内容、前身である障害者自立支援法との違いについて解説します。地域社会での障害者支援施設やサービスの役割についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
障害者自立支援法と障害者総合支援法の違いと改正の背景を徹底解説
現行の障害者総合支援法の前身となった法律が、障害者自立支援法です。障害者自立支援法の違いと障害者総合支援法への改正の背景について解説します。
障害者自立支援法(平成17年施行)の概要と主な目的をわかりやすく紹介
障害者自立支援法とは、障害者が地域社会での生活や就労を進め、自立した生活を送ることを目的に施行された法律です。
障害者自立支援法ができる前からも、すでに障害者への医療や福祉分野の各サービスやサポートは提供されていました。2003年にはノーマライゼーションの理念に基づく支援費制度が採用され、障害保健福祉施策の充実が図られたものの、以下の課題が発生しました。
- 身体・知的・精神の障害種別にサービスやサポート内容が分かれているためわかりにくく使いにくい
- 地方公共団体間のサービス提供格差が大きい
- 費用負担の財源確保が困難
そこで、障害の種類を問わず自立支援の観点から制度を一元化する目的で、障害者自立支援法の施行につながりました。
障害者総合支援法へと名称変更された理由と制度見直しの要点
障害者自立支援法は、2013年4月に障害者総合支援法へ名称変更が行われました。名称変更とともに、以下のふたつの制度見直しが行われています。
- 障害者制度改革推進本部等における検討を踏まえた、障害者(児)を権利の主体と位置づけた基本理念を定め、制度の谷間を埋める
- 障害児については児童福祉法を根拠法に整理しなおし、難病も対象とする
障害者総合支援法の概要と社会的意義を詳しく解説
障害者自立支援法からの名称変更と制度改正を踏まえた、障害者総合支援法の概要や目的について解説します。
障害者総合支援法が施行された背景と厚生労働省の施策推進の流れ
障害者総合支援法は、障害者自立支援法の改正を目的に施行されています。ただし、厚生労働省によると障害者総合支援法の趣旨とは「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて、地域社会における共生の実現に向けて、障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、新たな障害保健福祉施策を講ずる」こととしており、法律の根本は障害者自立支援法とは変わりません。
2013年に障害者総合支援法への名称変更とともに、前述の支援サービス制度の一元化、児童福祉法を踏まえた障害児への基本理念、難病の追加などの制度改正が行われました。
2018年4月には、障害者自らの望む地域生活を営むことを目的に、以下の改正が行われています。
- 「生活」と「就労」に対する支援の一層の充実
- 高齢障害者による介護保険サービスの円滑な利用を促進するための見直し
- 障害児支援のニーズの多様化にきめ細かく対応するための支援の拡充
障害福祉サービスの多様化と対象拡大のポイント
障害者総合支援法となったことで、以下の項目の追加および改正が行われています。
- 法律の目的に「地域生活支援事業」による支援を含めた総合的な支援を行うことを明記
- 「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること」などの6つの基本理念の制定
- 法が対象とする障害者の範囲を、従来の身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)に加え、難病等(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者)とする
- 対象者に必要な支援の度合い(障害支援区分)を測り、その度合いに応じたサービスが利用可能に
主要サービスの内容と利用対象者については、次にくわしく解説します。
障害者総合支援法の主要サービス内容と利用対象者の枠を知る
障害者総合支援法では、対象者の障害支援区分に合わせたサービスの利用が可能になり、利用対象者に難病等も加わりました。障害者総合支援法における主要サービスの内容と、利用対象者について解説します。
自立生活援助や就労移行支援など各種日常生活支援サービスの具体的内容
障害者総合支援法で制定されいる障害福祉サービスは、大きく分けてサービス等利用計画案を踏まえて個々に支給決定が行われる「障害福祉サービス」「地域相談支援」と、市町村等の創意工夫によって、対象者の状況に応じた柔軟なサービスを行う「地域生活支援事業」があります。
さらに、各サービスともに介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合は「訓練等給付」に位置づけられています。
障害児のみを対象とするサービスには、都道府県における「障害児入所支援」、市町村における「障害児通所支援」があります。
医療的ケアや重度障害者への対応強化における改正点
障害者総合支援法では、以下の医療的ケアや重度障害者(重度の肢体不自由者または重度の知的障害または精神障害により、行動上著しい困難を有する人)への対策強化や改正が行われています。
- 重度障害者へ入院中でも一定の支援が可能
- 介護の必要性がとても高い人に対して、居宅介護等複数のサービスを包括的に実施
- 重度の障害等により外出が著しく困難な障害児の居宅への訪問発達支援の提供
- グループホームの利用者(生活保護または低所得の世帯)が負担する家賃を対象として、利用者1人あたり月額1万円を上限に補足給付
- 継続的に相当額の医療費負担が生じる者(高額治療継続者)へひと月当たりの負担に上限額を設定するなどの負担軽減措置
グループホームや地域生活支援・施設サービスの役割を徹底分析
障害者総合支援法では、入所施設サービスの役割を昼のサービス・夜のサービスに分けることで組み合わせての利用が可能です。
たとえば自立支援給付サービスにあたる就労移行支援や就労継続支援を利用し、日中は事業所での作業や企業での仕事を行い、夜は施設入所支援や居住支援を利用して障害者入所施設やグループホームへ入所する、といったこともできます。
障害者一人ひとりに合わせた個別支援計画が作成され、地域生活支援の利用や施設への入所など、利用目的に応じたサービスを利用できます。
地域社会での共生実現を目指す新たな支援体制の現状と課題
障害者自立支援法は、障害者が地域社会で自立した生活を送ることで地域社会での共生実現を目指しています。一方で、以下のような課題もあります。
- サービス利用時の自己負担が障害者や家族に経済的な負担となっている
- 地域間で提供されるサービスの質や量に差がある
- 制度が複雑なため、必要な支援をすぐに受けられないことがある
課題の解決のために、自己負担額の軽減や公費負担の拡大や、地域間でのサービスの均一化などの対策が進められる見込みです。
利用申請から給付決定、サービス提供までの流れと相談窓口
障害者総合支援法では、障害者一人ひとりに合わせたサービスが提供されます。それらのサービスの利用申請から給付決定、提供までの流れと相談窓口を順に紹介します。
申請から利用までの流れ
サービスの申請から利用までは、以下の流れで行います。
- 相談
- 利用申請
- 障がい支援区分認定調査:認定調査員の聞き取り調査
- 自治体の支給決定:サービスや支給量などが決定
- 受給者証の交付
相談窓口となる市町村・福祉事業者の各役割
サービス利用のためには、まず自治体の障がい福祉担当窓口や都道府県指定する指定相談支援事業者に相談し、申請を行います。申請後、受給者証が交付されてから、サービス提供する事業者と契約を行います。
今後の障害者福祉制度の見直しと社会的ニーズ拡大への展望
厚生労働省では、2040年に向けた福祉サービスとの共通課題等に係る現状と課題・論点についての検討会を複数開催しています。障害福祉サービスの利用率は都市部で増加しているが、中山間部や小規模自治体では減少傾向であることが分かりました。
利用者の少ない地域では、地域での福祉サービスの維持・継続が難しくなる可能性があり、福祉サービスの量や質の地域間格差が広がっていくことが懸念されています。厚生労働省では、地域の施設同士が連携を取る、地域密着の施設が広域型の施設に転換するなどの、柔軟な対応を行うこと、新規事業者が参入しやすい土壌をつくることが重要であるとしています。
国の社会福祉法人への支援に加えて、地域が連携して障害者福祉支援を提供するためには、事業者の持続可能性を踏まえた施策が求められています。
まとめ
障害者総合支援法と自立支援法の違いと、現代福祉社会への影響などをまとめて解説しました。障害者総合支援法は障害者福祉サービスへのニーズや変革を背景に、障害者自立支援法が改正して生まれた法律です。今後も地域共生社会の実現を目指し、必要に応じた国の支援や法律改正などが行われる見通しとなっています。
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2ページhttps://www.mhlw.go.jp/tenji/dl/file01-01.pdf
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