雇用契約を結んでの就労が難しい方を対象にした作業所である就労移行支援B型施設(B型事業所)。正社員のほか、パートやアルバイトで働く場合でも交通費が支給されることが多く、就労移行支援B型施設へ通所する際に、交通費は支給されるのかが気になる方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、就労移行支援B型施設利用時に交通費は支給されるかとともに、割引や助成が受けられるケースについて解説します。
就労移行施設B型で交通費の支給は難しい
結論から言えば、就労移行施設B型で交通費の支給を受けるのは難しいと言えます。就労移行施設B型における一般的な交通費の考え方について解説します。
交通費は支給されなくてもほとんどの人が利用料無料
就労移行施設B型で支払われる工賃は「生産活動で得た収入から経費を引いた金額」と定められています。就労移行施設B型では、利用する人の能力やできること、働けるペースに合わせて仕事を選べます。雇用契約を結び、利用する人が合わせて仕事をする就労移行施設A型は交通費が支給される施設もありますが、利用者自身が限定的な働き方となってしまう就労移行施設B型では、交通費を出すことが難しいのです。
・生活保護受給世帯…0円
・市町村民税非課税世帯 …0円
・市町村民税課税世帯で入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く…9,300円
・上記以外…37,200円
就業移行施設B型の交通費が工賃を上回らないように注意
就業移行施設B型施設に通所するための交通費は、基本的に支給されないことが分かりました。施設の利用料は無料となるケースが多いものの、施設から自宅までの距離によっては、交通費が高額となってしまうことがあります。場合によっては交通費が工賃を上回ってしまうこともあるため、就業移行施設B型を利用する際には、自宅からの距離や交通費、通所する頻度なども踏まえて利用する施設を決めるようにしましょう。
就労移行施設B型の交通費が割引となるケース
就労移行施設B型への交通費は支給されることは基本的にありませんが、交通費が割引となるケースがあります。具体的な交通費が割引となるケースを順に解説します。
各社の障害者割引制度
鉄道やバス、地下鉄、タクシーなどの交通各社では障害者割引制度を設けていることが多いです。たとえばJR東日本では以下の障害者割引制度があります。
・第1種障害者とその介護者…普通乗車券・回数乗車券・普通急行券が50%
・第1種障害者とその介護者または12歳未満の障害者とその介護者…定期乗車券(小児定期乗車券を除く)50%
・第1種、第2種障害者が単独で利用する場合…普通乗車券50%
割引の対象者や範囲などは、各会社によって異なります。障害者割引制度を利用することで、就労移行施設B型の交通費の負担を抑えることも可能です。普通乗車券と定期乗車券は、施設に通所する回数によってもどちらがお得になるかが異なります。各会社の割引条件や範囲とともに、通所の頻度なども考慮しましょう。
自治体の就労移行施設の助成
自治体によっては、就労移行施設をはじめとした指定障害者福祉サービス事業所への通所で発生する交通費への助成を行っています。一例を順に初回します。
岐阜県大垣市
対象者:精神障害者保健福祉手帳の交付を受け、障害者総合支援法に基づく指定障害者福祉サービス事業所等へ通っている方
助成額:鉄道等を利用した所要交通費の2分の1相当の額
(定期券または回数券の場合、通所した日数に応じて計算した額)
三重県伊賀市
対象者:月8回以上訓練施設に通所等をしており、公共交通機関および自家用車を利用して通所等をされている方
助成額:公共交通機関を使用する場合は、通所に係る交通費の2分の1(上限月額10,000円)
自動車を使用する場合は、上限月額10,000円(使用距離に応じて日額が設定)
静岡県掛川市
対象者:障がいのある方で、市内に住所があり、指定障がい福祉サービス事業者(生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援を実施する事業所に限る)に通所している方
助成額:対象となる施設に通所した場合に要する通所費のうち、市の基準により月額上限20,000円まで
千葉県柏市
対象者:
・柏市内に在住し、住民基本台帳に登録されている方(市内のグループホームや知的障害者生活ホームに他の自治体の決定により入居されている方で、決定を行っている自治体から同趣旨の助成を受けている場合を除く)。
・柏市外のグループホームや知的障害者生活ホームに柏市の決定により入居されている方
助成額:公共交通機関等(電車、バス、タクシー、福祉有償運送)の月毎にかかった費用の2分の1の額(5,000円が限度)
自家用自動車(オートバイ含む)、原動機付自転車の距離に応じた日額
宮城県仙台市
対象者:
・身体障害者手帳をお持ちの方で、次に該当する方(対象部位が対象等級であることが必要)
身障手帳1級:障害部位に関係なく1障害1級である方
身障手帳2級:視覚・聴覚・下肢・体幹・移動・内部機能障害のある方
身障手帳3級
(1)下肢・体幹・移動機能障害のある方
(2)内部機能障害のある方のうち車椅子を使用している方又は在宅酸素療法を実施している方
身障手帳4級:下肢・体幹・移動・内部機能障害のある方のうち車椅子を使用している方又は在宅酸素療法を実施している方
・療育手帳をお持ちの方
・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方
助成額:以下いずれかの助成のうちひとつ
・ふれあい乗車証(バス・地下鉄の無料乗車証)
・「タクシーチケットサービス株式会社」に加盟しているタクシー会社で利用できる1枚500円の利用券を60枚交付
・「宮城県石油商業組合仙台支部」に加盟している給油所(一部を除く)で、給油の際に利用できる1枚1,000円の助成券を30枚交付
※いずれも所得制限あり
福島県福島市
対象者:下記の条件をすべて満たしている方
・福島市に住民登録があり、かつ居住している方
・障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護)を実施する事業所(地域活動支援センターを含む)に通所している方、または、実際に交通費を負担しているか(通所者の保護者など)。
・公共交通機関(鉄道、路線バス)または、通所先の事業所が運行する有料送迎を利用し通所している方
(4)生活保護法に規定する被保護者でない方
助成額:通所に要した交通費月額の2分の1
交通手段により以下の助成上限額ありあり
・公共交通機関(鉄道、路線バス)を月額助成上限額5,000円
・通所先の事業所が運行する有料送迎…月額助成上限額3,000円
・公共交通機関と有料送迎を合算しての助成は不可
神奈川県横浜市
対象者:下記事業の提供を受けるために通所・通院する、横浜市内に居住する15歳以上の障害者施設等通所者及び送迎介助者で、主に公共交通機関(電車・バス)又は自家用車(四輪、※障害の状況等から自家用車以外の通所手段がない場合に限る)を利用している方
・生活介護
・自立訓練
・就労移行支援(就労継続支援B型の支給決定サービスの利用に向けたアセスメント(就労アセスメント)を受けるために就労移行支援を実施する施設に通うことを除く)
・就労継続支援(横浜市総合リハビリテーションセンターに設置する就労支援施設)
・地域活動支援センター(横浜市精神障害者生活支援センターを除く)
※市外の地域活動支援センターについては、横浜市地域活動支援センター事業実施要綱第4条第1項第1号、第3号、第4号及び第5号に定める施設に準ずる施設
・地域作業所(市町村より運営費の補助を受けている作業所に限る)
・精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケア、精神科ナイト・ケア、精神科デイ・ナイト・ケア
※生活保護受給者を除く
助成額:
・公共交通機関(電車・バス)…「通所片道1回あたりの助成単価(運賃相当額)×通所回数(片道回数の総計)」または「6か月定期券代(上限額)」のいずれか低い金額を助成
・自家用車(四輪)…「通所片道1回当たりの助成単価(1kmにつき20円)×通所回数」
対象者や助成額、助成の有無は各自治体によって異なります。まずはお住まいの自治体の助成制度について確認しておきましょう。
就労支援B型事業所でほかに発生する費用
就労支援B型事業所へ通所する際に、交通費以外で発生する費用を順に紹介します。
昼食代
就労支援B型事業所に通所する際に取る昼食代は、自己負担です。自宅でお弁当を持っていったり、コンビニで買ったものを持参したりといった方法のほか、昼食を提供している施設もあります。昼食を提供している施設の場合、格安で昼食を食べられることが多いため、確認してみましょう。
診断書
就労継続支援施設をはじめとした障害福祉サービスを利用するときは、自治体に利用申請が必要です。申請時には、障害者手帳や自立支援医療受給者証等、障がいや病気の状況がわかる書類を申請書の提出が求められます。
障害者手帳を持っていない場合、障害福サービス利用の必要性を判断するために「医師の診断書」が必要です。診断書を発行する病院・クリニックによって異なりますが、診断書の費用は3,000円~5,000円ほどと考えておきましょう。
まとめ
就労支援B型施設の交通費についてと、交通費の割引や助成制度、その他で発生する費用について解説しました。就労支援B型施設は基本的に交通費の支給がありませんが、利用する交通機関やお住いの自治体によっては割引や助成制度を設けていることがあります。その他で発生する費用も考慮し、通所する就労支援B型施設を選びましょう。