障害者総合支援法の法改正により新しく誕生した障害福祉サービスが「就労選択支援」です。すでに存在する「就労移行支援」との違いは何か、就労選択支援を利用するにはどうすればよいか、といった疑問を持つ方もいるかもしれません。今回の記事では、就労選択支援と就労移行支援の違いと、就労選択支援を利用する流れを解説します。就労選択支援を利用するコツや就労を目指すポイントを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
就労選択支援と就労移行支援の違いを徹底解説
就労選択支援と就労移行支援の目的と対象者、サービス内容それぞれの違いを解説します。
選択支援と移行支援の目的の違い
就労選択支援の目的は、障害のある人が本人の希望や適性・能力に合った就職先や就労支援サービスの選択につなげることです。障害のある人本人が働き方を考えたり、就労移行支援や一般就労といった次のステップへつなげたりといったサポートが提供されます。
就労移行支援の目的は、障害や難病のある人が企業などと雇用契約を結び「一般就労」で働くために、必要なスキルを身につけることが目的です。本人の適性に合う職場の開拓や求職支援のサポート、就労後職場に定着するための支援なども提供します。
誰が対象?選択支援と移行支援の対象者の違い
就労選択支援の対象者は、新たに就労継続支援または就労移行支援を利用する意向がある障害者、およびすでに就労継続支援または就労移行支援を利用しており、支給決定の更新の意向がある障害者です。
就労移行支援の対象者は、65歳未満で一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者です。
選択支援と移行支援のサービス内容の違いを把握
就労選択支援では、障害のある人を適切な障害福祉サービスにつなげる、または次のステップを目指すために以下のようなサービスを提供しています。
・本人の強みや特性の整理
・本人の自己理解を促す
・アセスメントの結果の活用
・情報提供
・助言や指導
・雇用支援機関との連携、連絡調整
就労移行支援では、一般就労などを目指す障害や難病のある人に対して、以下のようなサービスを提供しています。
・事作業や企業内での作業や実習
・適性に合った職場探し
・就労後の職場定着のための支援等
障害者が就労選択支援を利用する方法と流れ
就労選択支援は2025年10月から開始予定の障害福祉サービスです。これから利用を希望する人のために、障害者が就労選択支援を利用する方法や流れを解説します。
利用申請
まず、障害者本人が市町村の相談支援センターで利用申請をします。申請時には利用者本人の心身の状況や、就労系障害福祉サービスの利用希望の有無などの聞き取りが行われ、結果を踏まえて就労選択支援の支給が決定します。
実施機関と相談方法
利用申請時の聞き取りにて状況を把握した後は、就労選択支援サービスが主体となり、市町村やハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどの関係機関とともにケース会議をおこない、アセスメント結果を作成します。アセスメントは、障害者本人と協同で作成されます。
アセスメントから希望の職業への適性評価
アセスメントでは、提供された地域の企業情報や、実際の作業場面などによって本人のスキルや適性、強みや課題、就労に際して必要な配慮などを把握します。
アセスメント結果をもとに、障害者本人の希望する就労系障害福祉サービスの利用申請を行います。サービス利用開始後も、利用者のスキルの変化や希望に応じて就労選択支援の利用を想定し、支援を開始します。
一般就労を希望している場合は、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなど関係機関に連絡し、必要に応じて職業指導を実施し、企業への就労を目指します。
就労移行支援の概要と利用方法
就労移行支援の概要と利用方法を解説します。
就労移行支援とはどのようなサービスか
就労移行支援とは、一般就労を希望している障害や難病を持つ人が、一般就労等に向けての知識や能力の向上支援、求職支援、職場定着を目的とした支援を提供する福祉サービスです。
就労移行支援を利用する流れ
就労移行支援を利用する流れは以下の通りです。
・就労移行支援事業所を探す
・事業所の見学へ行く
・事業所を比較検討して、利用さっき先を決める
・障害福祉サービス受給者証を申請する
・利用契約を結ぶ
・利用開始
まずは利用する就労移行支援事業所を探します。居住地の役所にある障害福祉課などに相談すると、通所できる範囲の事業所の紹介が受けられます。また、インターネット上で事業所の検索ができるサービスを利用するのもおすすめです。
興味のある就労支援事業所を見つけたら、見学へ行きます。実際に現場を見学することで実際の雰囲気やプログラムの内容の詳細、他の利用者の様子などを確認できます。契約後の利用者と事業所のミスマッチを防ぐためにも、見学は必ず行いましょう。
就労支援事業所を複数見学し終わったら、実際に利用する事業所の比較検討を行います。実際に見聞きした事業所の雰囲気のほか、特定の障害に特化しているなど利用者が就労支援事業所を利用する目的に合わせた事業所を選ぶと良いでしょう。
利用したい就労移行支援事業所や具体的な利用時期が決まったら、居住地の行政窓口に就労移行支援の利用希望を伝えます。必要書類を用意し、受給者証の申請を行います。
障害福祉サービス受給者証の発行後、利用する就労移行支援事業所と利用契約を行います。利用契約を結んだ後、就労移行支援事業所のスタッフが「個別支援計画」を作成します。支援計画に沿って就職を目指し、カリキュラムを進められます。
ハローワークや地域密着型の支援サービス利用のコツ
就労選択支援とハローワークの連携方法
ハローワークは、就労選択支援の利用者に対して、アセスメントの結果をもとに職業指導などを実施します。アセスメントの結果が有効活用されるように、就労選択支援事業所は、っハローワークのほか計画相談支援事業所や市町村との連携、連絡調整を行います。
ハローワークでは、職業指導をはじめ、職場実習、職業紹介、職業訓練のあっせん等の支援のほか、利用者が就職後のモニタリングも行います。
地域の潜在求人情報を活用した就職
就労選択支援のアセスメントの結果、一般就労が可能と判断されると企業への就職サポートが提供されます。一般就労を目指して就労移行支援の利用を開始したり、一般企業の面接を受けたりといった、求職活動を行います。
障害者の就労支援の一貫として、地域の潜在洗剤求人情報を活用して一般就労につなげるケースもあります。
障害福祉サービスの利用
障害のある人本人の希望やアセスメントの結果、障害福祉サービスの利用を選択する場合もあります。一般就労を目指すために就労移行支援で知識やスキルを身に付けるほか、就労継続支援事業所の利用が選ばれることもあります。
就労継続支援事業所とは、一般就労は困難でありつつも、継続して働く、または働く経験を積みたいと希望している人に対して一定の支援を提供する福祉的就労事業所です。就労継続支援には、就労継続支援A型と就労継続支援B型の2つがあります。
就労継続支援A型は、原則として18歳から65歳未満の人(要件を満たせば65歳以上でも利用可能)を対象に、事業所と雇用契約を結んで就労します。雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給料が支払われるのが特徴です。就労経験を積み、一般就労などを目指すための必要な知識や技術の習得といった目的もあります。
就労継続支援B型は、基本的に対象者の年齢制限はありません。雇用契約に基づく就労が困難な人を対象としており、生産活動を通して「工賃」が支払われます。
就労継続支援B型の工賃や交通費については以下の記事でもくわしく解説しています。
質の高い職業訓練でキャリアを積む
障害を持つ方が就労を目指すときには、知識やスキルを身に付けられる機関を利用することが可能です。おもな職業訓練や、一般就労に必要なスキルの取得方法を解説します。
専門の教育機関での職業訓練
就労を目指す人が新たな知識やスキル、技術を習得する支援として厚生労働省が提供している職業訓練には、障害者職業訓練(ハロートレーニング)があります。障害者職業訓練では、国、都道府県、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、民間教育訓練機関等が必要な連携を取りながら、障害者の人への職業訓練の実施や訓練技法の向上などに取り組んでいます。
障害者職業訓練は、国の設置する国立職業リハビリテーションをはじめ、国が設置して都道府県が運営する、または都道府県が設置する障害者職業能力開発校などで受けられます。
一般就労に必要なスキルを習得
障害者の人が一般就労を目指す場合、就労移行支援を利用し一般就労に必要なスキルを習得する方法があります。就労移行支援は必要な知識やスキルの習得ができるだけでなく、適正に合わせた就職先の開拓や、就職後の定着までのサポートなども受けられます。
まとめ:適切な支援を活用して就労の道へ
就労選択支援と就労移行支援の違いとともに、それぞれの概要や利用までの流れ、障害者の人が就労を目指すときのハローワークや関連機関の利用について解説しました。就労選択支援を利用することで、障害のある人の適正や希望に合わせた就労方法や就労先、障害福祉サービスを選ぶことが可能です。就労移行支援を利用すれば、一般就労も目指せます。まずは通所しやすい事業所を探し、見学をして利用者本人に合う事業所を見つけてみましょう。